地方消滅の危機が現実となった今、「地域を活性化する」という言葉はもはや理想的なスローガンではありません。
実際に人々が暮らせる地域をつくるために、私たちは何を考え、どのように実践すべきでしょうか?
ジロではこの疑問を解き明かすため、『地域の反乱』の著者であり、イベントネット代表であるオム・サンヨン博士にお話を伺いました。
本日の人物紹介
名前:オム・サンヨン
経歴・主な活動
1993年 テジョンエキスポ組織委員会 功労賞受賞
2021年9月~2022年 コエサン世界有機農業エキスポ 顧問委員
2020年7月~2020年 ウォーターウェイプラス・アラ運河市民提案プロジェクト 顧問
2015年2月~2019年2月 第25代 中小企業中央会 理事
現在:イベントネット代表
著書・訳書
『地域創生と地域活性化戦略』(翻訳)
『地域をデザインする』(翻訳)
『地域の反乱』(著者)
Q1. 地方消滅と地域活性化という概念についてご説明いただけますか?
A:地方消滅とは単に人口が減ることではありません。高齢化、少子化、首都圏集中が重なり、地域そのものが空洞化し、消えていく危機に直面しているのです。2014年、日本のマスダ・ヒロヤ氏が「マスダレポート」を発表し、2040年までに約900の自治体が消滅する可能性があると警告しました。そこから「地方消滅」という概念が始まり、本格的な地域活性化政策として「地方創生」が登場したのです。
韓国も状況は似ています。ソウル首都圏に人口の半数以上が集中し、地方では人も雇用も活気も失われています。ただし、対応方法には日本と若干の違いがあります。韓国では地域活性化のアプローチとして「地方創生」よりも「都市再生」に近い形を取っています。地方創生は新たに何かを創り出す戦略で、都市再生は既存の資源や構造を活用する戦略と考えればよいでしょう。
Q2. なぜ地域活性化が必要なのでしょうか?
A:地域活性化は今や選択の問題ではなく、やらなければならないことです。そうしないと、その地域で生活できなくなってしまいます。もちろん、首都圏集中は昨日今日始まったことではなく、定住人口を確保するのは簡単ではありませんが、それでも何かを始めなければなりません。
まずは「地域を活性化しなければならない」という意識が必要です。「うちの町はなぜ発展しないのか?」という疑問を超えて、その担い手が外部の資本なのか、自分自身なのかを考える必要があります。実際、多くのケースで外部の情熱的な人物が地域活性化を主導しています。ただ私は、外部資本よりも自分自身が主体となる「内発的な動き」が地域活性化において重要だと考えます。自らがその意識を持つことが大切なのです。
Q3. 内発的な動きは、どのように実現すべきでしょうか?
A:地域活性化のために外部から資本を引き込む方法は常にリスクを伴います。例えば大企業や軍部隊の誘致、KTXの誘致などは地域の力を総動員して取り組んだ結果、失敗すればダメージが大きいのです。一方、住民自身が主体となって作る内発的プログラムは、たとえ失敗してもリスクが比較的小さいです。
もちろん、地域住民の内発的な動きが持続するためには行政の支援が不可欠です。首長の考え方、自治体職員の認識や知識が今とは少し変わる必要があります。私は公務員向けの講演で一番重要なのは「キャプテン(リーダー)」だと話します。首長がどのような考えを持っているかが核心なのです。
Q4. 地域資源とは何であり、どう活用すればよいのでしょうか?
A:地域資源とは、「自分たちの地域に何があるのか」という問いから始まります。例えばテグでチメク(チキンとビール)フェスティバルを開催するのは理にかなっています。テグはチキンの名産地として有名なので、ビールと結びつけて「地域資源」として成立するのです。
また、ハンピョンの蝶のように、実際に蝶が飛んでいる場所でその祭りを行えば、それ自体が資源となります。チルゴクの「洛東江平和大祝典」も、洛東江という地域資源を背景に「平和」というテーマで祭りを開いています。
このように、資源はどこかから持ってくるものではなく、地域に実際に存在するものから出発すべきです。「私たちの地域に何があるか?」という問いから始めて、それを資源として再解釈する必要があります。
どこにでもある吊り橋のように、特に意味も地域性もないものは、コストだけかかって効果も薄いです。しっかりと地域を活性化するためには、固有の地域資源を活用することが重要です。
Q5. 地域祭りはどのように企画すべきでしょうか?
A:地域の特性をしっかりと反映して企画すべきだと思います。そして祭りを続けていく過程で、その特性が失われたり変質したりしないように努めることが必要です。
例えばウルク文化祭は、カヤグムの名手だったウルクという人物の名を冠して始まった祭りですが、年を重ねるにつれ、その意味が薄れてきました。当初は地域性をよく反映した祭りでしたが、実際には意味が形骸化してしまうこともあります。祭りが本来の意義を保つためには、そのストーリーとつながる流れを維持する必要がありますが、それは簡単なことではありません。
Q6. 日本の「地方創生」政策から得られる示唆は何ですか?
A:日本では2014年から「地方創生」という言葉が使われ始め、内閣府が主導しています。例えば島根県出身で東京に住んでいる人々を集めて「しまごとアカデミー」を開催し、地域の特産品をPRする活動を行っています。東京内に地域のアンテナショップを設ける事例もあります。
私も以前、日本の地方創生本部の方と話をしたことがあるのですが、さまざまな政策の効果が徐々に目に見える形で現れてきているという印象を受けました。
日本では韓国よりも早く「地方消滅」という概念が登場し、すでに対応策が成果を出す段階に入っているため、私たちも日本の事例を参考にできると考えています。実際に、韓国から日本へ視察に行くケースもあります。
Q7. 「関係人口」とは何ですか? また、地域活性化とどのような関係がありますか?
A:「関係人口」という概念は日本で生まれたものです。たとえば、かつて軍服務をチョルウォンで行った人が、後にもう一度訪れてみたいと思うような感情です。出張や祭りをきっかけにその地域を訪れ、食事をするだけでも、その人は「関係人口」とみなされます。
この概念が韓国に入ってきた際には「生活人口」として扱われました。興味深いのは、日本と違い、韓国の文化体育観光部では単なる観光客も生活人口に含めている点です。日本では、観光客や常住者を除いた人々を「関係人口」と定義しています。
日本ではこの関係人口を拡大するためのさまざまな取り組みが実際に行われていますが、韓国ではまだ理論的な議論にとどまっているケースが多いのが残念です。私たちも適切な理論的背景を構築し、関係人口を増やすための実質的な努力を始めるべきです。
Q8. 実際に成功した地域活性化の事例はありますか?
A:日本の洞爺湖では、住民たちが自ら氷の灯篭を作り、約40日間にわたってフェスティバルを開催しています。入場料として1人1万ウォン程度を徴収し、年間で40万人が訪れます。入場料だけでも地域の収入に大きく貢献し、観光客による消費も非常に多いです。
岡山県のa-zeroというグループは、ウナギやイチゴを育て、カフェや木工教室も運営しています。「本当に利益が出るのか?」と疑問に思ったのですが、実際には多くの人が体験しに訪れています。10年前に社長一人で始めた事業が、今では約170人の社員を抱える規模になっています。
名古屋では、陶磁器工場の敷地を文化スペースに変えて成功しました。韓国でも旧工場跡やタバコ・人参公社跡などを活用した事例はありますが、名古屋の陶器会社の現場では陶器の販売も行われており、韓国の事例とはレベルが違います。私たちも単なる「土地の活用」を超えて、その地域の特性を最大限に生かす方法を模索する必要があります。
Q9. 最後に、地域活性化に取り組む人々にメッセージをお願いします。
A:前にも述べましたが、最も大切なのは「内発的な動き」です。結局のところ、「私たち自身が主体的に行動できるかどうか」にかかっています。
ブログでも何でも、自分で始めてみると反応があります。それを見て連絡をくれる人もいます。私はブログを20年近く続けてきましたが、その過程で自然とマーケティングや他の分野のスキルが身につきました。そうした経験の積み重ねが、将来の地域活性化プロジェクトを行う際に非常に役立ちます。
とにかく、自分でやってみることが大事です。「こうやれば効果があるんだ」とわかると、それがとても強力な武器になります。他の人が知らないことを、自分はもう経験しているということになりますから。